「若者を巻き込むならお任せを」。そう切り出した21歳の求職者・久保翔丸に、社長陣は序盤から高い評価を付けた。社長の一人が自ら退出を申し出るという異例の展開を経て、最終ジャッジでは全員が採用の意思を示す。社長陣の一人として出演した小谷弘樹も、条件の組み立てに疑問を投げかけながら採用に手を挙げた。
「若者を巻き込む」21歳の求職者
今回の求職者は21歳の久保翔丸。希望職種は社内ベンチャーである。学生のうちから学生団体や会社、サークルの立ち上げに関わり、毎月150人以上の学生とイベント活動を行ってきたという。自身の強みとして挙げたのは、行動力、競争力、改革力の3つだ。
ダブルのスーツに身を包んだ久保は、初めて事業をしたとき、全財産をかけてオーダースーツを作ったと明かす。スーツには自分の名前を入れるほど、両親から授かった名前を大切にしている。人生の理念として掲げる「若者が翔く姿を魅せる」という言葉も、その名前から取ったものだ。
ただし、その歩みは順調なものばかりではなかった。小学生の頃にはいじめや両親の離婚が重なり、学校に通えなくなった時期がある。中学生で約20キロの減量に成功してから周囲の評価が変わり、音楽や営業の分野でも結果を残せるようになった。ところが大学3年生のとき、活動が「怪しいマルチ勧誘なんじゃないか」という噂を立てられ、人が離れてイベントも中止になった。久保自身もうつ病を経験したという。それでもついてきてくれた仲間のおかげで、現在は毎月150人規模のイベントを安定して開催できている。
法人は登記の申請中で、すでに出資する会社がつき、久保の持ち株比率は30%だという。社長陣からは、いまの事業と社内ベンチャーで手がける事業とがぶつからないかという懸念も示された。これに対し久保は、出資者に今回の出演を相談し、背中を押されて参加したと説明した。

期待値95%を付けた小谷、そして社長の「自主退場」
3本のプレゼンを終えた時点での中間評価は、軒並み高い数字が並んだ。期待値はおおむね80〜90%台、年収は500万円台から700万円ほどの評価が続く。小谷が示したのは期待値95%、年収600万円で、その場からは「高い」という声が上がった。三浦会長も期待値を90%とし、年収は「600ぐらい出せるかな」と評価した。一方で、口がうまいぶん熱意が軽く見えてしまう、という指摘も添えている。
これに対し、久保が開示した希望年収は350万円に、粗利の15%のインセンティブを加えたものだった。
番組が思わぬ方向へ動いたのは、その後の質疑の最中である。社長陣の一人である吉田社長が「ちょっと逆に退出したいす、僕」と切り出した。吉田社長は、会社を立ち上げたばかりで「今の段階で受け入れられない」こと、話を聞くうちに視聴者の目線で見てしまっていることを理由に挙げた。他の社長からは、なるべく残って聞いてほしいという声もかかった。
最終的に、求職者が社長を一人選んで外す「ジャッジメントタイム」で、久保は吉田社長を指名した。事前の面談でも、理念は合っていても今すぐには行動に移せないと聞いていたことが理由だという。吉田社長は、自分よりも経験を積んだ社長たちのもとで学ぶべきだと考えたと語り、久保を支えきれるだけの資金も自信もなかったと打ち明けた。

社内ベンチャーの事業プランに向けられた指摘
スキルチャレンジでは、久保が考える事業を社長陣の会社で社内ベンチャーとして採用してもらえるよう、5分間でプレゼンを行った。テーマは、すべての若者が夢に挑戦できる環境をつくる「総合型若者支援コミュニティサービス」である。
久保は、夢を持つ若者の割合が日本では5〜6割にとどまる一方、世界では9割を超えるというデータを示した。そのうえで、課題として資金面、「人間関係ガチャ」、地方企業での人材不足の3点を挙げる。これらを解決する手段として描いたのが、リアルイベントで夢を持つきっかけをつくり、指導育成スクールで夢に必要なスキルを身につけさせ、人材紹介で実績を積ませるという3つの柱だ。
資料の作り込みやプレゼンの内容には評価が集まり、「21歳でここまでやれたらすごいポテンシャルは感じた」という声も上がった。その一方で、指摘も相次いだ。学生からチケット代を取るのはハードルが高く、企業から収益を得るべきではないか。夢の定義やデータの母数はどうなっているのか。経営者を育てたいのか、労働者を育てたいのか、という問いも投げかけられた。
後半の質疑でも、焦点は目標の具体性に集まった。社長陣の一人は、若者に経営者目線の意識を持たせれば日本は変わると話す久保に対し、「抽象的なんだよね」と返す。たとえば兆円規模の会社をつくるといった旗を掲げてくれれば協力したいが、いまの構想は粗い、という趣旨である。久保は、現時点では抽象度の高い目標であることを認めた。そのうえで、活動を続けるなかで具体的な目標は定まっていくと述べ、「一刻も早く決めます」と応じた。

小谷が問いかけた「条件と希望のずれ」
最終ジャッジでは、残った社長全員が採用の意思を示した。年収480万円プラスアルファを提示した社長もいれば、自社に人材紹介の免許があることに触れ、リソースを持っているのは久保の側だとして、インセンティブを30%以上渡したいと述べた社長もいた。
小谷は、まず採用を「しない」としたうえで条件を伝えると切り出した。350万円プラス15%という条件では厳しいと前置きしながらも、「一緒に働きたいなとは思います」と続ける。考え方には共感しつつ、事業の話はまだ甘いため、価値観をすり合わせながら、どこに集中するかを一緒に話していきたいという。
小谷が引っかかったのは、条件そのものの組み立てだった。社内ベンチャーとして法人を設立し、会社が出資する形になれば、久保は役員になる可能性が高い。その場合、粗利の15%というインセンティブをそのまま当てはめるのは難しく、役員報酬を月100万円にするのか50万円にするのか、といった議論になる。つまり、本人の希望と報酬の形が合っていないというのが小谷の見立てだ。「採用自体はしたいんですけど」と前置きしたうえで、その条件では社内ベンチャーという希望そのものを叶えられないのではないかと指摘した。
これに対し、他の社長から、取締役の報酬は事前に定める必要があるが、執行役員などの仕組みを使えば従業員と同じように変動給にできるかもしれない、との補足が入った。この話はあとで詰めればよいので「する」にしておいてはどうか、という声も上がり、小谷も「じゃあするにしていいですか?」と応じて、採用の判断に切り替えた。

最後に三浦会長が提示したのは、100点、年収1000万円の固定だった。人を育てて紹介する仕事にインセンティブを付けると、給料のために人との接し方が変わってしまう。だからこそインセンティブは設けない方がいい、というのが三浦会長の考えだ。そのうえで「僕のとこに来てください」と呼びかけた。
久保が選んだのは三浦会長だった。ビジョンや、その場で示された説明に納得したことを理由に挙げ、画面の向こうの若者に向けて、挑戦して行動すれば21歳の新卒でも1000万円を出してもらえると語りかけた。
小谷は今回、久保を迎え入れることはできなかった。それでも、採用したい気持ちを示しながら、社内ベンチャーという希望を実現するには報酬の形から考え直す必要があると具体的に指摘した。この場面は、起業を志す若者が自分の条件を見直すうえでのヒントになるはずだ。
番組の全編は、YouTube「就活NEO」から。
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