YouTubeの登録者数を伸ばすため、先輩経営者を訪ねて次の社長を紹介してもらう新企画「社長数珠繋ぎ」が始まった。1人目のゲストは、うつや発達障害のある人の就労を支援するメンタルヘルスラボ株式会社の代表・古德一暁。社長・小谷弘樹が抱える部下育成の悩みに、先輩は率直に切り込んだ。
「チャンネル登録者が伸びない」から始まった企画
「YouTube始めましたと。チャンネル登録数が伸びません」冒頭、小谷は企画の趣旨をそう明かした。視聴回数はそれなりにある。だが、さらに伸ばしていくには知名度が必要だ。そこで、さまざまな先輩経営者のもとへ押しかけて宣伝してもらい、撮影の最後には次の先輩経営者を紹介してもらう。それが「社長数珠繋ぎ」だ。
紹介してもらう相手には条件もある。動画が話題になっていて、登録者数が小谷より多く、しっかり宣伝してくれそうな人。本人いわく「俺は何も努力をせずして繋いでもらう」企画だという。副次的な要素として、先輩たちがどんな事業をしているのかも聞いていく。
最初に訪ねたのは、メンタルヘルスラボ株式会社の事業所。代表が手がけるのは、うつや発達障害のある人に向けた障害福祉施設で、いわばプログラミングスクールだ。利用者はExcelやPowerPoint、デザイン、プログラミングといった就労に向けたトレーニングを受ける。あわせて、たとえばパニック障害なら発作が起きたときにどう対処すればいいかといった、自分の障害の「取説」を、平均10ヶ月ほどかけて職員と一緒に言語化していく。この事業所には、毎日230名ほどの利用者が通っているという。

弟の病気から始まった「ハードモード」の選択
事業の原点は、代表自身の弟だった。以前の動画で代表が語ったところによれば、弟が統合失調症になったことをきっかけに、メンタルヘルスに関心を持つようになったという。親は順当にいけば先に亡くなる。そのとき、自分が弟の面倒を見続けるのは大変だ。だが10年ほど前の当時、弟を通わせて社会復帰させられるような理想的な場所は、業界になかった。
加えて、当時の障害者雇用の働き方といえば軽作業や事務作業程度しかなかった。そこで代表は、IT分野の就労支援に乗り出す。企業にはなかなか理解されなかったが、10年ほど必死に啓蒙を続け、障害者雇用でもデザイナーやエンジニアといったポジションを企業とともにつくってきた。
「儲かりそうな領域でやればもっと会社はスケールするかもしれないけど、あえてこのハードモードを選んでる」業界のパイオニアのような立場で歩んできた代表の言葉だ。小谷は「家族思いの弟思いのめっちゃいい人」と、見た目とのギャップを強調してみせた。
毎年きつい。それでも「逃げる」のがうまい
経営でつらかった時期を問われると、代表は「常に今」と即答した。会社の規模が大きくなるほど、自分一人ではどうにもならない規模の問題が毎年のように生まれる。仮に10億円の売上を前年比200%で伸ばし続けるなら、次は20億、その次は40億。伸ばすべき幅はどんどん大きくなっていく。
同社は出店を続けなければトップラインが伸びないビジネスで、創業から11期目の今も一貫して投資を続けてきた。昨年は赤字幅が1億円弱にまで縮まってきたといい、あと4期ほど、15期目あたりでの上場を求められるのではないか、と代表は見ている。組織の器に合わない成長を続けている以上、「当然苦しいよね」と代表は率直に語る。

病んだ時はどうしているのかと小谷に問われると、代表は「どうせやるしかないんじゃん」と返した。そのうえで明かした秘訣は意外なものだった。「俺ね、逃避するのが超上手」。うまく前向きになれていないと感じたら、ためらわずに休み、逃げる。ゲームをしたり、ポケモンカードをしたり。小谷の目にはスケジュールがびっしり詰まっているように見えるが、実はその合間にポケモンカードの大会を「仕事のように」やっているだけだという。実際、Googleカレンダーにもポケモンカード大会の予定が入っているそうだ。

「向き合うべきは人じゃない」先輩が突いた小谷の課題
話は次第に、小谷自身の悩みへと移っていく。「何がそんな自分を追い詰めてんの?」と問われた小谷は、売上や利益ではないと答えた。自分を追い詰めているのは、理想の状態とのギャップを埋めるための課題、とりわけ部下の育成だという。せっかく入社してくれた新入社員には入ってよかったと思ってほしい。表情にも敏感で、悩んでいる様子に気づいてしまう。だからマネージャーに全面的に任せることに恐怖心があり、ある程度は自分が入らざるを得ないのだという。

これに対する代表の答えは明快だった。経営者が究極的に向き合うべきは人ではなく、社会やビジョン、成し遂げたいことだという。人と向き合うこと自体が目的になってしまうと、負担が大きくなる。時間をかけるべき人とそうでない人を分け、一人当たりの生産性の最低水準を決めておく。「基準が青天井だからしんどい」どこまで関わればよいのかという基準があれば、ゴールが見える。もっと伸ばしてあげたいと思うのは経営側の勝手だから、押し付けすぎない方がよいと助言した。
こうした助言を送る一方で、代表は「経営者としてちょっとは成長したなっていうのを感じる」と、小谷の変化も認めていた。小谷によれば、初めて会った頃にできない社員への不満をこぼしたところ、代表から、そんな社長にみんながついてきてくれているのだから感謝しないとだめだ、と諭された。それを機に心を入れ替え、全員としっかりコミュニケーションを取るようにしたという。
小谷の会社の現在の年商は10億円ほど。それを聞いた代表は、年齢を考えれば「全然俺よりすごい」と認めた。1年後にまた決算書を持ってくると意気込む小谷に返ってきたのは、「別に年商とかじゃない。どういう思いで何をなすか」という一言。数字の先にどんな未来をつくるのか。先輩経営者からのこの問いとともに、数珠繋ぎ企画は幕を開けた。
密着の全編は、YouTube「こたにの人生逆転ちゃんねる」から。
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